2016/01/04

インターン卒業間近 ~ヨルダンでシリアの人びとに出会う~

こんにちは!インターンの萩原です。
実は、もうすぐ半年間にわたったアムネスティのインターンを終えます。卒業間際の11月22日から30日にかけて、中東ヨルダンに行ってきました!あまり馴染みのない国かもしれませんが、「死海のある国」と言えば分かる人もいるのではないでしょうか。


ペトラ遺跡を見て、死海に浮かび、砂漠で満天の星空を満喫・・・
ではなく、首都アンマンで暮らすシリア難民の家庭を訪れてきました。目的は、シリア難民の人びとの生活を知ること、そしてわずかながらの物資を渡すことです。現地でシリア難民を支援している市民団体の人たちと一緒に行動しました。

大学の卒業論文のテーマがシリア難民であったこともあり、私はもともとシリアで続く紛争や難民の問題に関心がありました。アムネスティのインターンを通して「何事も熱意をもって知ろうとする大切さ」を知り、ヨルダン行きを決意しました。
ヨルダンの首都アンマンの街
ヨルダンの人口は約600万人、国民の9割がイスラム教徒です。近隣シリアで紛争が激化する中、ヨルダンには多くの難民が押し寄せています。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、その数は約63万人、人口の1割以上に匹敵する数です!

ヨルダンにいるシリア難民は、UNHCRまたは政府から発行される「難民登録ID」があれば、食糧や教育、医療などのサービスを受けることができます。しかし、難民の数が急増し、支援は日を追うごとに縮小されてきています。私が出会ったシリア人の多くは、食糧支援を以前の半分に減らされる、定期的に支給されていた生活補助金の停止といった困難に遭っていました。また、IDがあっても、仕事をすることは許されません。警察に見つかると、国内の難民キャンプへ送られてしまいます。

シリア人たちの就労を許すと、自国民の職が失われてしまう。しかし収入のない難民63万人の生活を支援し続けることも大きな負担となる。

ヨルダンのこの状況に、シリア難民は先行きの見えない日々を送っています。それでも、現地のチャリティーグループや近所の人たちからの支援など、十分とはいえなくとも草の根の活動は確かに存在します。

今回の訪問で、私は7世帯約30人、センターで暮らす女性と子どもたち約50人のシリア難民と出会いました。状況は、一人ひとりさまざまでした。テレビやパソコン、ソファーなどが揃った清潔な部屋に住んでいる家族もいれば、家具をほとんど持たず、砂ぼこりの舞う壊れた家に住んでいる家族もいました。

状況は違っていても、彼らはみな戦争によって人権を脅かされ、奪われていることがわかりました。

仕事をしたくても働けない人たち。
勉強をしたくても学校へいけない子どもたち。
大切な人と引き裂かれた家族。
衣食住が不十分な生活を強いられる人たち。

戦争さえなければ」と思わずにいられません。

初めに訪問した家庭は、妻と二人の子どもと暮らすアンマールさん一家。アンマールさんはとても疲れた様子でしたが「ようこそ、入ってください」と私たちを招いてくれました。部屋は猫の尿のような匂いがしました。アンマールさんは体調を崩しているため、妻が警察に見つからぬようにハウスクリーニングの仕事をしています。周りに助けてもらいながら、何とか生活を送っています。
アンマールさんの暮らす家

母国で目撃した凄惨な光景を、涙ながらに話してくれた人もいました。孫のナタリーちゃんの肩を抱きながら、ファウジーヤさんはこう語ってくれました。

「この子の母親は撃たれて死んでしまった。その時、この子を腕の中に抱いていたの。ナタリーは今でも、『お母さんは何時に帰ってくるの?』と聞くのよ。ある日には、政府軍が母親の目の前で赤ちゃんの首を切り落とす光景も見た。そのあと母親も殺されたわ」

私は、ただじっと話を聞き、涙を堪えるしかありませんでした。

しっかり耳を傾け、少しでもその人の苦しみを分かち合うことができたら・・・。
そんな思いを抱きながら、その場に座っていました。

最後にファウジーヤさんは「私の得意料理で、今度、あなたたちをもてなしたいわ」と、笑顔で言ってくれました。

子どもたちと交流する機会も多くありました。戦争で家族を失くした女性や子どもが生活する施設を訪れた時には、みんなで千羽鶴をつくりました!




ねえ、次は?どうすればいいの?

右から左から、作りかけの鶴を持った小さな手に、肩を叩かれます。少し曲がって出来た鶴に満足しながら、次の紙に手を伸ばす姿がとても印象的でした。千枚の折り紙がなくなるまで、子どもたちは手を動かし続けていました。

子どもたちが大人になるころ、シリアは一体どんな状況になっているのだろう。
そう考えずにはいれませんでした。

戦争という辛い経験をし、自分たちの生活が厳しいにも関わらず、どの家族も「アハラン・ワサハラン(ようこそ)」と私たちを迎えてくれました。私たちにコーヒーと食事までご馳走してくれた人もいました。そして、いつも互いに温かい笑顔を向けていました。イスラム教には「客人をもてなす」という文化があります。苦境の中でも、人からもらうだけではなく、人に与えるという精神をとても大切にしているのだと思いました。
シリア人たちの淹れるコーヒーや笑顔は「どんなに抑圧されても、変わらないものがある。自分たちの信条、人の温かさ、心の尊さまでは簡単に奪われない」という強い証のように感じました。


ヨルダンから戻り、いよいよインターン卒業が近づいてきました。世界の人権問題を知りたい、人権とは何かを考えたい、という思いからアムネスティの扉を叩き、そして今もまだ無数の人権問題があることに気付かされました。不当な逮捕された上に、拷問される。戦争によって家を追われ、苦しい生活を強いられる。脅迫され、命を狙わる。いつも「なんて理不尽だろう」と思うものばかりです。

そんな理不尽と闘うアムネスティと過ごした日々、そしてヨルダンへの訪問で、人権問題の渦中にいる人たちと出会い、五感を使って問題と向き合うことができました。さまざまな問題が「他人事」から「自分事」に、少し近づいた気がします。今後も、世界の一市民としてあらゆる人権課題に関心を持ち、自分にできることをし続けたいと思います。

この大切な第一歩を、アムネスティの人たちにお世話になりながら、踏み出せたことに感謝の気持ちでいっぱいです。

半年間、ありがとうございました!
担当の山下さんと


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